■60代 男性 会社員 鳥取市
■来院
2018年 8月
■来院時の状況
2018年 5月のGW頃から両腕の挙がりがだんだんと悪くなり、その後夜間痛も出てきて眠れないとの事でした。可動域も、両腕とも20度程度ということで痛みも含めてかなり生活に支障が出ていた状態です。
整形外科で電気治療と鎮痛剤、マッサージなどに行ったが全く効果がなく、かなり困った状態で来院されました。
通常、五十肩はどちらか片方に症状がでるケースがほとんどなので、今回の様に両腕が同時に発症するのはかなり珍しいケースと言えます。
施術内容と経過
初回の検査時で、両腕が同じように可動域20度程度で自力での挙上では痛みが走るという状況でした。
お話をうかがうと、長時間のデスクワークで元々かなりの肩こりを抱えていたのと、以前に目の病気を患ったことで視力も良くないとの事。これらが長年続いた事は引き金になったと言えます。
検査では、デスクワークにありがちな腕の内旋がひどく肩甲骨が前方に引っ張られた状態で固まって、かなり動きが悪くなっていました。合わせて、肋骨に全く動きがなくなっていました。
これらも、五十肩の大きな原因と言えるので、条件が揃っていたと言えます。
(腕は、肩関節だけでなく肩甲骨・肋骨も同時に動く事で初めて挙げたり回したりする事ができます。)
主な原因としては、
- 腕の内旋からの肩甲骨が前方に引っ張られた状態の固定化
- 圧倒的な肋骨の動きの無さ
- それに伴っての肩周辺の筋肉の緊張(棘下筋・小円筋・三角筋など)
また、今回特筆すべきは、「両腕が同時に発症した」という事です。
片腕を挙げる際、肩甲骨・肋骨も同時に動きます。片腕の五十肩であれば、患側と反対側の肩甲骨・肋骨の動きはあるので、患側の腕の動きをつける手助けになるのですが、今回は両側ともに全く動かない状態なので、非常に難しいケースとなります。
1~4回目
施術を進めるにあたって、今回はどのように進めて行くかが非常に重要になります。
具体的には、
- 片腕ずつ改善を図っていくか
- 両腕を同時進行で改善を図っていくか
という事です。
どちらか片方でも早く動く様になれば生活などは楽になりストレスも軽減されるのですが、反対の肩甲骨・肋骨が動かないので通常の片腕の改善よりも時間がかかる事が予想され、効率が悪くなります。
今回は、あくまで両腕を同時進行で改善させていく方向にしました。
まず目指すことは、
- 夜間痛を軽減させて睡眠を確保する
- 動作時の痛みを軽減させる(両腕同時進行)
です。
睡眠不足は何より改善を遅らせるので、夜間痛軽減で睡眠を確保できれば改善のペースは格段に早まります。
また、動作時の痛みが軽減すれば脳のロックが外れるのでさらに動く様になってきます。
なので、経過としては「痛みの軽減→可動域の広がり」という流れになります。
序盤は、週1回ペースでの来院としました。
今回のケースの特徴としては、施術後はある程度可動域が出てくるが、次の日には元に戻ってしまうという点でした。
序盤では可動域はあまり気にせず、夜間痛と動作時の痛みの軽減を優先に考えていただく様にお伝えしていましたので、一喜一憂することなく進めていけました。
4回目(来院より約3週間)を終えるころには、痛みは半分以下に軽減されておりかなり楽に感じておられた様です。
5~8回目
この期間は、いわゆる小康状態といえる期間になりました。
施術後は可動域も広がるが、数日で戻ってしまい次の施術前は再び挙がらない状態でのスタートになっていました。
ただ、夜間痛は無くなり動作時の痛みも軽減されていたのが幸いでした。
「痛みが無くなっただけで、今までとは比べ物にならないくらい楽です」との言葉に救われたのが正直なところです。
ここまで左右均等に施術を行っていましたが、6回目の時点で左腕の方がやや動きが良くなりつつあったので、ここからは左腕と右腕の施術を7:3の割合にしてまず左腕を改善させる方針に切り替えました。
また、肩周辺の筋肉は少しずつ緩んできていたので、鎖骨・肩甲骨・肋骨へのアプローチを中心にしていきました。
ここまで、引き続き1週間に1回のペースで施術をしてきました。
9~12回目
痛みを感じる機会が少なくなったので、この期間は2週間に1回ぺースに切り替えました。
期間を空けても悪化する事はなく、可動域は60度までコンスタントに保つことができていました。
ただ、60度からがなかなか改善していかなかったのも正直なところでした。両腕を同時に進めていくのは、思いのほか苦戦していましたが、とにかくご本人が前向きに取り組んでくださっていました。
そして、12回目来院時に「上まで挙がるようになりました!」と意気揚々とされていました。前回からの2週間の間で、ある朝からグッと動きやすくなったそうです。
五十肩の特徴の一つとして、「ある日突然動き出す」というものがあります。
今回もそれにあたりますが、原因ははっきりわかりません。
もちろん、それまでに少しずつ積み上げてきたものもあると思いますので、なかなか動きがなくてもあきらめなければ必ず改善するという好例だと言えます。
13~14回目
その後、経過観察も兼ねて3週間ぺースで2回施術を行いましたが、悪化する事もなく状態をキープ。日常生活にも支障が無くなったとの事だったので、14回目にて施術を卒業となりました。
どちらか片方は多少の不具合が残るかと考えていましたが、両腕共に同じように改善する事ができました。
まとめと考察
今回は、両腕同時という珍しいケースで、どのように進めて行くか頭を悩ませましたが、結果的に同時進行という方法にした事が功を奏したと考えます。
片方が挙がりにくくなり、その後もう片方というパターンであれば基本的には先に発症した側を中心に進めていくのですが、今回はタイミングが同時だったとの事なので、施術もそのタイミングに合わせて同時進行で行いました。
前半、可動域がなかなか動きが出てきませんでしたが、ご本人がしっかり腰を据えて取り組むという姿勢でしたので、あるタイミングから一気に改善に迎えたのだと痛感しています。
あらためて、五十肩は根気強く、適切な処置をすれば恐れる事も絶望する事もないのだと感じています。
お電話ありがとうございます、
鳥取整体院でございます。